「アーツイデース。」
突然、そして、久しぶりに聞いた日本語に、びっくりしました。が、気を取り直して、
「Can you speak Japanese? (日本語話せるの?)」
と聞いたら、
「ウン、チョトダケ。」
ということで、私たちの出会いの会話が始まりました。
どうやら、その時お付き合いしている彼女が日本人らしく、
だから、日本語が少しわかるんだ、ということでした。
その時の私は、彼氏とか、交際とか、ロマンスとか、結婚とか、全くもって興味がなく、
このお客さんには彼女がいるというだけで、安心したのでした。
というのも、私は両親とも若くして亡くなってしまっていたので、
家族を持つといずれは失ってしまうので、こんなに悲しい思いをするならば、
最初から持たない方がいい、と思い込んでいたし、その事は、色々とあって、
やけっぱちになっている頃でもあったので、もう一生一人で過ごした方が
無難だわ、と逃避モードだったんですね。
だから、彼女がいるというこの方は、とても安全に思えたのです。
その時の会話は、まったく気軽な会話で、
「Why in the world are you live in this city? なんでこんな所に住んでるの?」
「I've been here since last summer as a gymnastics instructor. (器械体操のインストラクターで、去年の夏の終わりからここに住んでるの。)」
「So rare to see a Japanese in this town. Do you have any friend? (この街で日本人を見かけるのは、珍しいなぁ。友達とかいるの?)
「I know few people, but I don't have friend.(知った人は何人かいるけど、友達はいないよ。)」
「What do you do in a day off?(休みの日とか何してるの?)」
「I go to movie, bike riding, shopping mall, but not much.(映画とか、自転車のったりとか、ショッピングモールに行ったりとか、でもあんまり色んな事しないな。」
「By yourself?(一人で?)」
「Yup, by myself.(うん、一人で。)」
「What is your hobby?(趣味とかないの?)」
「I used to race windsurfing, playing piano, gymnastics, reading book. But I don't have windsurfing gears, I don't have piano here, I can't find any Japanese book, so I don't do much.(ウィンドサーフィンでレースしてたし、ピアノ弾いたり、体操とか読書とか。でもウィンドの器具がないし、ピアノも持ってないし、日本語の本は探せないから、そんなにすることないんだ。)」
「I do windsurfing, too! Do you ski?(僕もウィンドサーフィンするよ!スキーは?)」
「I can ski, but I'm not good at it.(スキーは出来るけど、あまり上手じゃない。)」
「I can take you skiing if you want to.(もし行きたかったら、スキーに連れてってあげるよ。)」
「Really? OK!(ほんとに?オッケー!)」
こんな感じでした。
私としては、
(カナダでカナダ人にスキーに連れてってもらえるなんて、なんてカナダらしい!)
というまったく気軽なものでした。
スキーに行った時は、彼はその時の彼女の話ばかり(彼女はその時、日本に帰っていたので、遠距離恋愛だったんですね。)で、私は
「この彼女さんは、この人にこんなに愛されて、なんて幸せ者なんでしょう。」
と感心するばかりでした。
そんな感じで、私たちの友情はスキー、ウィンドサーフィン、ハイキング等、
アウトドアで清らかに育まれ、私のインストラクターの1年の任期も終わりを
迎えました。と、同じ時期に、彼も彼女のいる日本に行くということになりました。
忙しい中、ひとりぼっちの私を楽しませようと、スキーやウィンドサーフィンなど
色んな楽しい経験を作ってくれた彼に、私はありがとうカードを渡しました。
それは、日本にまだ住んでいる時に、気に入って購入した、ひまわりの写真の
ポストカードで、あまりにキレイなので、特別な時の為にと取っておいた、
お気に入りのカードでした。
つたない英語で、(今読んだら、もう恥ずかしいくらい、誤字脱字誤文法だらけ。。。)
感謝の気持ちを伝えました。
そしたら、そのひまわりの写真を見て、
「This photo is really good for a screen printing. Do you want to make hand printing card with me? この写真は、印刷に向いているから、一緒に手作りのポストカードを作る?」
と言ってきました。
スクリーンプリンティングが、なんのこっちゃ、全くわかっていない私は、
カードを一緒に作るんだということだけは理解して、オッケーと言いました。
それから、お互いが日本に帰るまでの1週間、このカードを一緒に作るために、
毎日一緒に過ごしたんです。
初めて訪問した、彼のご両親のお店の裏に、印刷の器具がたくさんあって、
Tシャツのデザインは、こうやってプリントするんだとか、トロフィーの
金属のプレートの部分は、こうやって名前とかを彫るんだとか、未知の世界でした。
お父さんに会った時は、腕にある”MOTHER”と彫られたタトゥーが気になって、
「この方、そうとうお母さんを尊敬しているのねー。」
と思ったり、お母さんに会った時は、
「優しそうな方ねー、だから彼も優しく育ったのねー」、
って思ったり、13歳くらいの姪っ子さんが、カナダの東の果てまでヒッチハイクで横断した話を聞いて、
「なんてワイルドな家庭なんでしょう。」
と、思ったり。
それから、同じ時に、彼は彼女に渡す指輪のデザインを懸命にしていて、
私は同じ女性として、このデザインはこっちがいい、とか、あっちの方が
喜ぶと思う、とかアドバイスとかして。
そして、彼が日本に行くからということで、どうやら彼の親戚や友人が
集まって、サプライズのパーティーを企画していたのを知らず、
ただの夕食会だと聞いて、出かけて行ったら、通りのここそこに、
知った様な車が駐車しているのをみて、すぐに
「これは自分のサプライズパーティーだ。やっぱり行かない。」
と言って、パーティー会場まで行って、そのままUターンして戻って来て、
湖に一緒に行こう!と言われ、その午後を一緒に過ごしたのは、この私です。
家族のみなさん、ごめんなさい!
それは、楽しくて充実して、彼の事をもう少し知る事の出来た1週間だったのでした。
そして、こんな素敵なカードが出来上がり、
お互いに日本に行く準備が出来ました。
彼が先に日本に行ったのか、私が先に日本に帰ったのか、覚えていないのだけど、
最後にさよならを言った時は、とても寂しかったのを覚えています。
「同じ時期に日本にいるから、是非彼女と一緒に
長崎に遊びに来てね!とても良い所だから!」
という言葉を後に、ハグをする事もなく、バイバイしました。
好きになってもらおうと、氣を遣うこともなく、化粧をすることもなく、
Tシャツにジーンズという、なんとも気軽なお友達付き合いをする事が出来た
のが、実を結んだのでしょうかねぇ。
ということで、大好きなひまわりさんは、大活躍だったのです。
だから、私のメールアドレスには”ひまわり”が入っているんです。
ひまわりの様に明るく元気なまり、という意味ではなくて、
ひまわりがまりに幸せを持って来てくれた、ひまわりさんに感謝という
意味なんですよー。
ということで、ひまわりのお話はこの辺で、お・し・まいっ。
楽しんで頂けたでしょうか?
チャン、チャン。